[二見ヶ滝と赤滝]
以前、徳島県牟岐町の波打ち際近くに落下する二つの滝を紹介したが、隣町の美波町の旧日和佐町域にも浜に落下する滝がある。しかも水量や落差の規模は牟岐町の滝より大きい。それは二見の海崖に懸かる「二見ヶ滝」。この前紹介した外ノ牟岐の浜の南西に位置する。
現在、二見という地名は存在するものの人家はない。人家があったのは正嘉2年(1258)8月まで。当時、南阿波サンライン下の山腹に約800戸の人家があり、「二見千軒」と呼ばれていた。
が、前述8月にこの地方を襲った暴風雨により、洪水、土砂崩れ、大波が発生し、二見集落は一瞬で消滅してしまったのである。その集落の痕跡が今に残る補陀落山観音寺跡の五輪塔群だという。また、二見の沖の海底にも人家の石垣の切石等が眠っているという。
災害後、観音寺は日和佐の中心街に移り、「二見山観音寺」と称し、現在に至っている。
二見ヶ滝は集落跡下方の海崖に懸かっているが、浜へはザイルがないと下りられない。そのため、先日当方がロープ(ザイルではないが)を設置してきた。ただ、フリークライミング経験者ならザイルなしで降りられるかも知れない。
尚、二見ヶ滝へ行く前に「日和佐八景」にも選ばれている山間部の赤滝に行くことをお勧めする。岩肌を滑るように流れる滑滝だが、落差は25mあり、規模的には問題なく、爽快。この滝が昨日投稿した記事で触れた、久本雅美氏の母の里がある木岐に近い滝である。
国道55号(旧道の方)の一の坂トンネル東から北西の県道289号に折れ、道なりに町道へ入り、その終点から歩道が始まる。一応、道路の各分岐には赤滝の道標が設置されているが、駐車場は整備されておらず、道路終点には一台分しか駐車スペースがない。
徒歩約10分で赤滝(上の写真と下の地図)に着く。滝の懸かる岩盤が赤く見えることから滝名が付けられたが、前述の牟岐町の海岸滝が「白滝」故、「紅白揃い」となる。
二見ヶ滝へは、観音寺跡から下るルートが行き易いようだが、観音寺跡への歩道入口が分からなかったため、造成中の土地(115m独立標高点付近・地形図は「日和佐」)への工事用ダンプ入口(下の地図)から適当に斜面を下って行った。
尚、地形的に見ると昔、その造成地付近に二見の伝説の巨大な池があったものと思われる。その池には大蛇が棲んでいたが、干上がって以降も昭和20年頃、猟師が目撃している。それを他言した猟師は一ヶ月、高熱にうなされたという。
ほどなく杉が植林された平地に達したが、ここが二見千軒の一角(上の写真)だろう。
西側には涸れ沢が並行しているが、これは下流で二見ヶ滝の谷に合流する。
平地の南端まで来ると、そこから先は急勾配になっていたので、比較的下り易そうな所を選び、木々に掴まりながら、時折雷状に下って行く。涸れ沢に並行するルート故、往復路共、迷うことはない。
勾配がやや緩くなり、標高35~40mほどで滝の上流の沢に水が流れ始める。それまでは伏流水となっている。
沢幅は狭く、滝の天辺(上の写真)にも容易に立てるが、滝自体は豪快。
樹林と崖の際のやや東から滝の姿を捉えることができる。ここまでは道がなくとも、誰でも辿ることができるだろう。
浜へ下りるには、更に東へ進む。すぐ急傾斜の涸れ沢が現れるが、ここは渡渉する。その少々先から少し崖を下り、灌木にロープを巻き付けた。
見下ろす限りではそのまま下れそうに思ったが、もっと東の方が下り易かった。
崖を南東にへつりながら下りて行くと、段状スロープになった箇所があり、そこに下り立って更に東の細い崖の沢前から浜に下りることができた。
落差15m以上あると思われる二見ヶ滝は豪快だが、滝壺は水溜り程度で、海へは流れておらず、地下に浸み込んでいる。
この滝へは陸路より、カヌーやカヤックで海路から訪れるケースが多いようだが(上陸者自体は少ない)、夏場は滝の真下に立つと気持ちいいことだろう。
浜とは言え、波は比較的荒く、滝の西方にはいくつものポットホール(甌穴)が形成されており、東方も波で浸食された岩屋風の海崖が目立つ。
次回は中部山渓の「もう一つの」落差100m以上の滝を探訪予定。
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