[真夏も花の群生だらけ]
西日本で2番目に高い山・剣山(1954.7m・徳島県三好市、那賀町、つるぎ町)の過去の画像を見返していると、高山植物や山野草が兎に角多いことに改めて驚かされた。しかも群落になっている花が何種類もある。
剣山の夏の花で最も有名な花は以前も触れた、宮尾登美子の小説「天涯の花」に於いて、「月光のように澄み、清らかに輝いていた」と称えられたキレンゲショウマ。剣山は日本一の群生地である。他にもシコクフウロやカニコウモリ等の群落もある。大量に植栽されているものではキスゲ(下の写真)がある。
それらの花々を巡るコースも以前触れたかも知れないが、改めて説明すると、三好市側の見ノ越から登山リフトに乗って中腹まで行く。リフトの下を見ると、黄色い花がリフトに沿って上方まで続いているのだが、これは植栽された黄色いキスゲ。空中散歩時も目を楽しませてくれる。
中腹の西島駅に到着すると尾根コースを登って「刀掛の松」まで行く。
刀掛けの松も以前説明したかも知れないが、安徳帝が剣山に潜幸時、刀を掛けた松だと言われている。他にこの松(枯死して倒木に)を「衣掛けの松」とする説もある。この衣も安徳帝のものである。
刀掛けの松前の分岐を左折し、180m進むと分岐があるが、一方通行になっているため、直進の道を進むしかない。この分岐からの二つの道共、キレンゲショウマの群落(上の写真)がある。盆期間に行くと確実に咲いているが、当方が訪れた年はまだ蕾が何割かあった。この花のレモンイエローは鮮やか。まさに月光のよう。
キレンゲショウマ群落の手前にはセリ科ツルギハナウドの群落(上の写真)もあるが、開花しているものは一部。文献では開花期が7月になっていたから、過半数が散っていたのかも知れない。茎の天辺に小さな白い花を付け、それが集合体となる。見た目はハナウドに似ている。
キレンゲショウマ群落を過ぎると今度は同じウド類のシコクシシウド(上の写真)が現れる。ツルギハナウドより背が高く、花はまるで打ち上げ花火が空中で弾けたかのよう。
両剣神社の箇所で一方通行の2コースが合流する。先に進むと大河・穴吹川源流の谷があり、近くの沢には滝も落下している。
更に20分弱ほどで今度はキク科カニコウモリの群落が現れる。コウモリソウは葉の形が、コウモリが羽を広げた様子に似ているのだが、カニコウモリはカニの甲羅にも似ている。花は小さくて細長く、まるで蕾のよう。
このコースは徳島県第4位の標高を誇る一ノ森(1879.2m)へと向かっているのだが、一ノ森三角点手前、一ノ森ヒュッテが建っているピークには四国の高山ではポピュラーな高山植物、フウロソウ科シコクフウロの群落(上と下の写真)がある。紫色の花弁に濃い脈が走っているのが印象的。
一ノ森は五葉松群が素晴らしい。白骨林もある。
以上が一ノ森から剣山回遊コース上の8月時の目ぼしい花の群落である。宮尾登美子が剣山を舞台にした小説を書いたのも、高山植物が豊富だったからだろう。
剣山上からは晴れた日には西日本最高峰・石鎚山や中国地方最高峰・伯耆大山も見通せるというが、夏場はガスがかかることが多い。
剣山本宮上の安徳帝が宝剣を埋めた宝蔵石(上の写真)は、邪馬台国四国山上説では天孫ニニギノミコトが葦原中国へ降臨する際、この石を高御座として出立したという。
因みに当方がキレンゲショウマ群落を訪れた際は二泊三日で見ノ越に宿泊し、初日は鳴滝や土釜、夫婦池を探訪し、二日目はこのコース、三日目は超急登の赤帽子山(1620m)の最短コース(→赤帽子山最短急登コース)を登った。
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