Quantcast
Channel: 次世代に遺したい自然や史跡
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1077

司馬遼太郎の「龍馬街道」に於ける虚

$
0
0

≪造語「阿波北街道」の定着に於ける問題≫

最近、一部のネットでは、'09年5月、当方が高知新聞紙上で初めて公表(著書に記載するのは翌年)した造語「阿波北街道」が、通常の街道名として定着しつつあります。


土佐西街道(藩政期の呼称は「西道筋」)や土佐東街道(藩政期は「阿波路」)も明治以降に造られた言葉ですから、阿波北街道(徳島県三好市池田町白地から高知県南国市宍崎・阿波側での呼称は「土佐街道」)も仲間入りするのは喜ばしいことですが、問題なのは坂本龍馬との関連。


実は私が阿波北街道を踏査する何年も前、街道沿いの三好市山城町の境谷番所(阿波側の国境番所)跡へと向かう古道入口に自然、戦跡、ときどき龍馬-阿波北街道・振腰峠坂本龍馬・青雲の道」という標柱が建てられました。


これは以前も触れたように、司馬遼太郎が「竜馬がゆく」の中で、龍馬が江戸に剣術修行に行く際、通った道は、現在の国道32号の前身の道であるようなことを確信を持って述べていたからです。


そこで旧山城町の有志たちが、町内の32号の前身の道を'00年代初頭、調査したのです。ただ、そのルートには一部誤りがあります。それは'09年に発見された文久時代に描かれた阿波国図の街道のルートとは一部、異なる区間があるからです。

私は阿波北街道の踏査に入る前にこの図のコピーを入手したため、正確なルートを踏査することができました。


問題なのはネットでも『作り物』である「竜馬がゆく」のその記述を信じ込み、阿波北街道は龍馬が江戸へ行く際に歩いた道だと書き込む者がいる、ということ。

以前も話したように、遼太郎は阿波北街道を歩いたことは一度もありません。土佐の各主要街道の正確なルートや、その役割についても把握してなかったのです。


いくら自宅に何万冊もの蔵書があっても、現地調査をしなければ、絵に自然、戦跡、ときどき龍馬-阿波北街道・大久保番所跡 描いた餅と同じです。

龍馬が江戸に行く際のことは、以前も解説したように、坂本家を監督する家老・福岡宮内(くない)の日記に記されています。そこには、江戸に行った二回とも、「北山通」や「立川番所」を通る旨、藩に届けたことが記されているのです。


前も触れたように、北山通とは土佐北街道のことを指し、立川番所は土佐北街道沿いにあった土佐一の番所です。


では、土佐北街道はどういう性質のものであるかと言えば、ずばり、最速で瀬戸内に抜けるために整備された道なのです。これは参勤交代によるものです。

尤も、土佐北街道の前身の道は延暦15年(796)、既に官道として開かれていたことが分かっています。


藩政時代初期、土佐藩の参勤交代ルートは土佐東街道でした。そして終点の甲浦で船に乗ります。しかしその船旅は、風のため海が荒れて予定通りに目的地に着くことができないことがしばしばあったのです。


そこで比較的波が穏やかな(太平洋と比較すると)瀬戸内海を渡って自然、戦跡、ときどき龍馬-讃岐街道・鳥坂峠 、中国路を東進するルートに変更することになります。そのルートこそ、土佐と伊予を縦断する土佐北街道と、伊予から讃岐へと抜ける讃岐街道(讃岐側の呼称は伊予街道)だったのです。


讃岐の仁尾や丸亀から船に乗るようにしていましたが、藩政時代後期には丸亀港が四国最大の港となり、周辺施設も充実していたことから、丸亀が土佐藩の参勤交代道の四国内に於ける終点となったのです。


この土佐北街道のルートを現在の高知自動車道もほぼ踏襲しています。現代の高速道工事関係者から見ても、このルートが瀬戸内に抜ける最短ルートだと判断されたのです。


恐らく、遼太郎は福岡宮内の記した「福岡家御用日記」の内容は知らなかったことでしょう。知っていたら、龍馬が阿波北街道を歩いたなぞという馬鹿げたことを記述するはずがありません。いや、四国の街道の知識がなければ同じかも。


龍馬会の元祖、龍馬研究会の顧問の中にも「竜馬がゆく」を史実だと思い込んでいる者がいますが、小説は基本的に皆「作り物」なのです。


ですからみなさんも作り物やネットの風聞に惑わされないよう、己の「目」を持ってください。龍馬が阿波北街道を歩いたのは、江戸行きの時ではなく、関西からの帰国の途次である文久二年二月です。


尚、三枚目画像は讃岐街道の鳥坂(とっさか)峠(三豊市と善通寺市との境界、国道11号の鳥坂交差点)。土佐藩主もこの峠で休憩し、峠の饅頭屋で「鳥坂饅頭」をよく食べていたと言います。その鳥坂饅頭は驚くことに、茶屋主人の代々子孫に受け継がれ、現在でも営業を続けているのです。


今週末、鳥坂饅頭を買いに行こうと思った方は、次の二つのバナーをプリーズ・クリックon

にほんブログ村 歴史ブログ 坂本龍馬へ
にほんブログ村

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1077

Trending Articles