[一つの滝壺に二つの滝が]
冬の渓谷や滝巡りを敬遠されている方もいると思うが、身体が火照れば、滝風や沢風は気持ちよく感じる。つまり、ある程度の起伏のある遊歩道の渓谷は、冬でも心地良い。
そこでお勧めなのが、愛媛県宇和島市街地から僅か7km東方にある薬師谷川上流の薬師谷渓谷。ここは自治体が十数年ほど前、2,500万円をかけて木造の遊歩道橋を改修した位の景勝地。
両岸の巨大岩盤が岩戸のようになった「岩戸の滝」(2枚目写真)や遊歩道橋下に懸かる「萬代(よろずよ)の滝」、滑床渓谷の同名滝のように岩肌を滑るように流れる「雪輪の滝」を始め、甌穴群の「大瓢箪」や「小瓢箪」等、変化に富んだ景色を楽しむことができる。
メインの滝である雪輪の滝まで行けば、身体も火照ってくる。
渓谷遊歩道は大瓢箪先の円筒形の堰の手前で終わるが、宇和島市誌に掲載されている渓谷略図には、更に上流に「オタカ滝」なるものが記載されている。そこでこれを探すことにした。尚、実は本来、この滝を探すために渓谷の上流に分け入ったのではなく、円筒形の堰の先から銭ヶ岳へ登ろうとした次第。
しかし地形図に記載されている破線道は廃道化しており、途中で断念して下山した。が、このまま帰ったのでは、観光客と同じように、整備された渓谷をただ探勝しただけで終わってしまう。それでは私がここに来た意味がないので、オタカ滝を探すことにした訳。実際、沢を遡行していくと、三つも滝があり、その内二つの瀑布は同じ滝壺に落ちていた(1枚目写真)。
ということで、そのルートを記す。まず、円筒形堰(下の写真)は右岸(東岸)を越える。因みに、右側の堰前にある岩を「風神岩」、左側堰前の岩を「雷神岩」と勝手に名付けた。若しくは「フウガ岩」と「ライガ岩」でも良い(YOU は SHOCK !)。
堰の上流ですぐ沢は二手に分かれる。東の開けた沢が本流のように見えるが、薬師谷川本流は南の陰気な涸れ沢の方。市誌の略図では俗称の「水無川」として表記されている。
最初は右岸(東岸)に作業歩道が付いている。しかし植林帯に入ると消え、沢には水が流れている。そのまま沢沿いを登って行くとほどなく進路に岩が現れるので、そこで左岸(西岸)に移る。こちらは所々踏み跡が残っている。ヤブはない。
しばらく登ると、横に45度位に傾斜した岩盤を縦に滑るように流れる滝(上の写真。下の写真は滝の天辺)に出くわした。落差は20mもないが、天辺の木の枝に三本、マーキングテープが巻き付けられていたことから、当初、これがオタカ滝ではないかと思い、しばらく休止した。
が、その上流にも激流の音がする。まだ奥に別の滝があるかも知れない、と思い、遡行を再開すると、上流は川床が滑らかになっている箇所が多く、その先にはX字にクロスした滝状の激流(下の写真)も飛沫を上げている。
その内、左岸が遡行し辛くなったので、右岸に渡り直したが、ほどなく間伐された植林が折り重なるように倒れている箇所に到り、やや登り辛くなる。
するとさきほどの滝より大きな滝に出くわした。しかも一つの滝壺に二つの滝が落ちている。本流の滝は滑るように流れる滑滝(下の写真)で、支流の滝は水量が少なく、一旦、上部の岩に落下してから、向きを変え、岩肌を斜めに滑るように落下している。横から見ると、瀑布の形状は以前紹介した四国最大の滝・高瀑(たかたる・132m:コースガイドは→四国最大の滝・高瀑と高瀑渓谷)に似ている(最後の写真)。
この二つの滝は「夫婦滝」と呼んでもいいが、規模はさきほどの滝より大きい。落差も雪輪の滝に匹敵するほどかも知れない。このどちらかがオタカ滝だろう。「オタカ」は何を意味しているのか分からないが、「オ」が「雄」であれば、支流の滝が飛沫を上げる荒々しさがあるので、雄タカ、本流が雌タカの滝と呼んでいいだろう・・・?
ここの高度計の高度は465mだったが、銭ヶ岳断念時、高度修正を行ってなかったので、プラスマイナス20m位の誤差があるかも知れない。薬師谷渓谷駐車場(流しそうめん店前)の標高が160mなので、一時間半ほどで到達できるのではないだろうか。
因みに現在、萬代の滝上流の橋が通行禁止になっている。しかし高学年の小学生以上であれば、橋台部の岩に垂らされたロープを伝って遊歩道に下りることができる。
往路はその遊歩道を歩き、復路は狭い林道のような旧道を下れば良い。
尚、流しそうめん店前の駐車場(車道終点)は、夏場は使用できない。夏場や三台以上の先客がいる際は、駐車禁止表示のあるバスの転回場を過ぎて少し行った所の右手のやや広くなった箇所に駐車すること。そのバスの終点は「薬師谷温泉前」。バスはJR宇和島駅か市の中心街から出発するものと思うが、詳細は宇和島市観光協会TEL0895-22-3934へ。
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