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お龍、土佐和食(わじき)へ(20) [夜須町編へ突入]

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いろは丸事故等、三度も海難事故に遭った者

香南市香我美町岸本から続く土佐東街道沿いの住宅街は、夜須町坪井に入っても変わらない。

南側に駐車場のあるY字路から街道は北東に一旦向きを変えた後、再び東進して夜須町の中心街へと入るが、駐車するため、道の駅やすの駐車場に入ろうとした。しかし満車で駐車できなかったため、夜須川の最下流の橋・臨海橋を渡った先の路肩に駐車した。そして土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線夜須駅西から北に折れ、県道51号を北上する。

 

余談だが土佐くろしお鉄道の夜須駅は当初、現在地から数百メートルほど東に設置される予定だった。土佐電鉄安芸線の夜須駅跡の西側辺りである。しかし町側から、新設される(平成14)海浜公園「ヤ・シィパーク」(手結海水浴場の後身)の玄関口にしたいという強い要望があったため、現在地に駅ができた。当初の駅予定地はヤ・シィパークの有料駐車場になっている。

 

県道51号の前身は町一番の幹線道「郡道夜須線」(明治42年に第一期工事完了)で、日吉神社北側の土佐東街道との交差点角に「夜須村道路元標」が建っている。夜須町の前身である「夜須村」の名称は藩政期から昭和18年まで使用されていた。

 

尚、県道や周辺宅地の状況から見ると、本来、県道の拡幅工事はこの交差点まで行われる予定だったはず。日吉神社とその北の駐車場の一角だけが、開発からぽつんと取り残されている感じ(4枚目写真)だが、これは恐らくこの神社の祭神が神社の移転を拒んだ、つまり、「障り」があったためだろう。土佐市や安田町か安芸市か忘れたが、似たような小社がある。

 

元標から西に折れて土佐東街道を辿るが、これは北西の観音山にある、坂本龍馬らが遭遇したいろは丸事故時、その場にいた岩崎弥太郎の部下の墓に参るため。

 

西へ進むに連れ、街道らしい旧家が現れる。

天理教夜須分教会西の互い違いの三差路まで来ると、ここで街道と分かれて北に折れ、突き当りにある観音山登山口を目指す。

 

登山口には道しるべがあり、石段が続いている。

山は墓地山で山頂には観音堂と常光神社が建立されているが、目当ての墓は安政の大地震の津波記念碑(6枚目写真)下方墓所にある。その人の名は土居市太郎(1833~1873)。いろは丸事故以前にも龍馬と間接的な関わりがあった。慶応253日に起こったワイルウェフ号沈没事故である。

 

ワイルウェフ号の名は龍馬ファンなら全員知っている位、有名。薩摩藩がグラバーから6,300ドルで購入した小型帆船で、亀山社中に貸与されていた。

 

ワイルウェフ号は慶応24月、長崎で引き渡され、28日、薩摩で命名式を行うため、長崎を出航する。その際、長州藩より薩摩藩に届けられる兵糧米を積んだ薩摩藩船・桜島丸に曳航されていた。

 

この時、ワイルウェフ号には池蔵太や黒木小太郎、佐柳高次らの亀山社中社員の他に、市太郎も水夫として乗船していた。

 

そんな薩長や社中の「夢と希望」を乗せたワイルウェフ号と桜島丸は翌日、台風に遭ってしまう。桜島丸は二艘共難破することを防ぐため、やむを得ず、曳綱を切断、ワイルウェフ号は海面を木の葉のように舞い、漂流を始める。

 

暴風雨は連日続き、遂に52日未明、ワイルウェフ号は五島列島中通島潮屋崎沖の暗礁に乗り上げ、沈没してしまう。乗組員と客12人の内、前述の亀山社中社員は皆、死亡。生存者は市太郎他4名のみだった。

 

翌年419日、坂本龍馬率いる亀山社中後身の海援隊は、大洲藩から貸与されたいろは丸で初航海に出る。土佐藩の後援を得た海援隊は、岩崎弥太郎が運営を任されていた開成館長崎出張所(通称:土佐商会)が扱う貿易品を輸送する役目も負っていた。そしてこのいろは丸に弥太郎の部下である藩俗事方船頭、市太郎が乗船していたのである。

 

意気揚々と船出した龍馬たちだったが、2323時頃、備讃瀬戸沖で紀州藩船明光丸と衝突、沈没してしまう。この時、海援隊や市太郎他乗組員は明光丸に乗り移り、無事だった。

 

市太郎はその後も弥太郎の腹心として、九十九商会(前身は開成館大阪出張所)、三川商会と、弥太郎に付き従うが、社名が三菱商会に改称された明治6年、「最後の海難」に遭ってしまう。79日、三度目の海難に遭い、命を落としてしまったのである。

享年41歳、日本経済を牽引してきた財閥の功労者は、ふるさとの海を望む丘で静かに眠っている。

 

「お龍街道」の終点、芸西村の手前の「夜須町編」には次回以降も期待する、という方は次の二つのバナーをプリーズ・クリック

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