[剣ヤ滝・蛇渕の滝・中の川の滝]
前回解説したアメガエリの滝が懸かる瀬戸川渓谷(高知県土佐町)は現在、日本気象協会の紅葉情報では「見頃」になっている。
その探勝路、瀬戸川渓谷遊歩道は拙著や当ブログでも解説した高知県一の尖峰、剣ヶ岳(972m)登山口に懸かる吊橋へと繋がっているが、その間の瀬戸川渓谷の渓流は吉野ブルーで美しく、所々淵にもなっており、歩いていても楽しい。しかしこの遊歩道を歩く観光客は少ない。
ところで剣ヶ岳は先日、テレビ高知のニュース番組で「土佐のマッターホルン」と呼ばれている旨、説明されていたが、この山のコースガイドを市販書で初めて公開(‘06年)したのは拙著「土佐のマイナー山part2」。拙著の読者や、読者がネットで公開した記事を見た登山愛好家の間でこの山が知れ渡って有名になったとしたら、当方としても本望。
アメガエリの滝から前述の吊橋までは散策程度で歩けるが、途中、道路に上がるエスケープルートもあるので、アメガエリの滝の下り口に縦列駐車した際は帰路、利用するといいだろう。
その吊橋まで行くと再び観光客が増える。皆が目指すのは瀬戸川支流の成川に懸かる「蛇渕の滝」。蛇渕は吸い込まれそうな深い滝壺のことだが、それより手前、吊橋を渡った先にある分岐を右に折れると、観光客が見逃して通る落差10m少々の剣ヤ滝がある。
こちらの滝壺は深くはないが、濃いグリーンをしており、折り重なった洞穴状の石をくぐると滝壺から流れ落ちる激流の真ん前に出ることができ、神秘的。
鑑賞を終えると山道(剣ヶ岳登山道でもある)に戻り、少し登るとまた道標のない三差路があり、それを右折して下った先に蛇渕と蛇渕の滝が現れる。こちらも日光が当たっていれば吉野ブルー(グリーン)になることだろう。大蛇が棲んでいても可笑しくない規模と雰囲気を持っている。
拙著でも記したが、これより上流、中ノ川との出合の中ノ川側にアメガエリの滝を上回る落差の大滝、通称「中ノ川の滝」が懸かっている。拙著では落差20mほどではないか(鉄塔巡視路から見た限り)と記してしまったが、改めて間近に見てみると、50m位あるのではないかと思われる大滝である。
拙著では途中の送電鉄塔標柱の分岐からその滝の対岸へ行ける旨、記したが、そのコースは現在、途中で道が崩落し、廃道化している。それでもコース沿いの蛇渕の滝へ続く川床は、愛媛県一の滝、高瀑(たかたる・落差132m)下流の川床のように傾斜が緩く滑らかで、渓流はウォーターシューターのように流れていて景観がいい。
ローカット・シューズ(短靴)で探勝していた当方はここで片足の靴が脱げて落ちてしまった。幸い、成川までは落ちなかったものの、裸足になり、木に掴まりながら下りて行く等、難儀した。
再び剣ヶ岳登山道に戻り、先を進み、起伏がなくなってくると、木の間越しの対岸に中ノ川の滝が見えてくる。すると踏み跡のY字路が現れたので、右折したが、後でこのルートは誤りだったことに気づいた。下方で踏み跡がなくなり、急勾配の植林帯を滑り落ちるように下りることになったのである。
帰路、よく見てみるとその踏み跡の入口には通せんぼの木が置かれていた。正規コースが分岐するY字路はこのすぐ先にあったのである。そちらは踏み跡も明瞭故、皆、分かることだろう。
正規コースは中ノ川の滝の斜向かいの岸へ下りている。そこからは増水していない限り、川床の石を跳び渡って中ノ川の滝の滝壺まで行くことができる。
但し、滝壺は猫の額ほどで、長靴で入れそうなほど。しかし滝自体は迫力がある。最上部から落下した滝は右斜め下の岩にぶつかって向きを反転させ、二条になり、段々になった川床の崖を滑り落ちるように落下している。記念写真にももってこい。
滝を見上げると、右側から中段へ上がれそうだったので、少々ヤブ(トゲあり)をかき分け、そこへ登った。そこから上は特に川床(崖の岩肌)が滑らかになっており、瀑布はスカートが両側に膨らむように広がって滑り落ちている。その光景は、山型に吊るしたイルミネーションのようでもある。
余力がある方は剣ヶ岳(吊橋から山頂まで50分ほど)まで登るといいが、以前解説したように、登山道は9合目の鞍部までしかない(コース図とガイド→土佐一の尖峰・剣ケ岳)。
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