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この世の地獄・立山室堂血の池地獄

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[火山ガスと真っ赤な血の池群]

以前、山岳避暑地三景や黒部渓谷下ノ廊下の記事で触れた、日本最高所の温泉や最高所のトンネル(立山黒部アルペンルート)を擁す富山県・立山の登山基地、室堂(標高2450m)だが、ここは夏と秋では景色が一変する。

 

夏場は緑が眩い高原で、点在する火口跡である池も碧く鮮やかなのだが、9月末以降の秋、景観が様変わりして、室堂を取り囲む高山群の山肌は茶褐色となり、点在する池の一群、血の池群(上の写真と下の地図)は俯瞰すると池面が赤黒く映り、仏教に於ける地獄の「血の池」の様相を呈している。そしてその北西にはその名も「地獄谷」という箇所があり、至る所から火山ガスが噴出し、周辺は賽の河原をイメージさせるような荒涼とした景観で、まさしく「この世の地獄」たる光景。

 

立山周辺には「立山地獄」なる地獄群がある。平安時代末期の「本朝法華験記」や「今昔物語集」には、日本のあらゆる罪ある者は立山地獄に堕ちる旨、記されている。前述の地獄谷には昭和中期まで二体の身代わり地蔵が建っていたのだが、藩政時代中期の「立山道名所」によると、この地蔵が亡者の身代わりとして地獄の責め苦を受けてくれたため、地蔵の目や耳、鼻、手足等がそぎ落ちたのだと言う。

 

立山地獄は八大地獄に各16の別所地獄等を合わせて136の地獄があるとされるが、その一つが前述の「血の池地獄」なのである。この地獄には女性のみが堕ちるという。それは、女性は生前、月経や出産で不浄を行い、その血で穢れた衣類を川で洗濯し、その川の水や、それを使用した野菜、飲んだ魚等を神仏に供えるからである。死後、血の池地獄に落ち、毎日鬼に池の血を飲まされるという。

 

その女人救済施設もあった。芦峅姥堂がそれで、女人救済の一大霊場となっていた。しかし明治の廃仏毀釈で廃止された。その後姥堂基壇が発掘整備され、平成3年、そこに隣接して立山博物館別館・遥望館が建設され、灌頂法会等を体験できるようになった。

 

当方が室堂(室堂平)を訪れたのは’931019日の平日だったが、立山黒部アルペンルートは国際山岳観光地だけに観光客は多かった。早朝や夕方以外では登山客の姿は殆ど見られない。この時期、標高二千数百メートルの高地では冬の寒さになることは想像していたが、耳がちぎれるほどの痛みを伴う寒さだった。西日本では雪山級の極寒である。

 

この立山山系に抱かれた室堂には周回する各種遊歩道が整備されている。当方はアルペンルート東端の大町温泉郷の「酒の博物館」に寄って各地酒の試飲をしたかったため、室堂では遅い昼食後、その遊歩道の一部を駆け足で巡った。まず、最大の火口湖跡池・みくりが池かその東のミドリが池を巡ったと思う。それから血の池群北西の展望台へ登り、各池や立山山系を見渡したが、雲が低く垂れこめていたため、山系は中腹までしか望めなかった。

 

日本一高い場所にある温泉・みくりが池温泉から地獄谷へと向かった。谷周辺では鼻を押さえていないと嘔吐してしまいそうなほど、臭いのきついガスが噴出している箇所もある。荒涼とした谷周辺には尖った岩塔も聳え立ち、側からもガスが噴き出している。

 

地獄谷にはコンヤ地獄やかじや地獄等があるが、どこがそうだったのかは覚えていないし、ガスの中、ゆっくり探勝する余裕はない。遊歩道北端の雷鳥平まで行ったかどうかも記憶にないが、バスの発車時刻まで時間に余裕がなかったため、走って40分ほどで巡った。普通に歩いて回遊しようと思えば、その倍ほどの時間を見ておくといいだろう。

尚、大町温泉郷へ向かう前、大観峰(2316m)や黒部平(1828m)のケーブルカー乗り換え地点で少し展望を楽しんだ。下の写真は黒部湖。

 

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