[百神滝と酷似した機滝]
以前紹介した四国一記念撮影に適した滝・百間滝(百神滝)に酷似した滝が愛媛県四国中央市の赤星山(1453.2m)登山道の一つにある皇子渓谷に懸かっている。この渓谷は伊予風土記によると、斉明天皇が道後温泉に行幸された際、天皇の皇子で後の天智天皇が訪れたとされている。
渓谷は結晶片岩からなり、所々岸は切り立っており、無数の滝を懸けている。その中に六つほどの顕著な滝があり、最上部の滝は大雨時には三ヶ所の瀑布が一つになり、落差70mほど(高度計での計測)の大滝となる。その70m時の天辺の高度(標高970mほど)と登山口との高度差は650mほど故、全ての滝を巡るには2時間以上要する本格登山となる。
この渓谷は松山自動車道土居ICからのアクセスが良い。ICを降りた所の信号交差点を西に折れて一つ目の信号交差点を南に折れるだけ。後は一直線に進むと四国のみちの道標等が登山口まで案内してくれる。ただ、登山口駐車場にはトイレがないので、女性はどこかで済ませておく必要がある。
駐車場に至るまでの間、渓谷を整備した方の顕彰碑から数百メートルほど南下した所の大地川(上流が皇子渓谷)に小さな滝が連続する樋瀉渕があるはずだが、特に案内板は建っていなかった。
登山口(上の地図)には赤星山登山者用の登山ポスト(登山届投函箱)があるが、ここから赤星山に登ろうと思えば3時間半以上かかることだろう。因みに当方は鋸山から七々木山、豊受山を縦走して赤星山に登頂したことがある。(→東部法皇山脈縦走)そのコースでは二ヶ所にカタクリの花の群落がある。
大地川は登山口から既に渓谷状になっており、何度も丸太を組んだ木橋で左右岸に渡る。滝状の流れも多く、水は澄み切っており、標高が低い割に涼しい。かつて標高400数十メートルの中千本と呼ばれる所にトイレがあったようである。
最初に現れる滝は無名の滑滝で案内板の設置はなく、標高490mほどの左カーブ奥に懸かっている。
二番目の滝が渓谷随一の美しい滝で、百神の滝に酷似した愛媛県一フォトジェニックな滝・機滝。落差も百神滝と大差ない17m。右側の瀑布が幅広で、左側の瀑布(下の写真は天辺)がスリムという所や、両滝の形状、滝の懸かる岩盤の形も殆ど同じ。
百神滝と異なる点と言えば、左右の滝間の距離が短く、谷の幅も狭く、広い河原状の箇所がない、という所。滝壺付近の岩石が濡れて滑り易いため、記念写真を撮りにくい点も百神滝とは異なる。
また、百神滝が左右それぞれの瀑布の天辺の川床に簡単に立つことができるのに対し、機滝は右側の瀑布天辺には立ち辛い。ただ、左側の瀑布の形状は機滝の方が優れている。それは上部で4条の流れが一つになっているから。
機滝のすぐ上流には紅葉滝(上の写真)が懸かっているが、こちらは落差、水量とも機滝よりあり、迫力の飛沫を上げている。
地形図(東予土居)には唯一、標高580m地点に滝マークが記載されているが、ここに懸かっているのは滑るように流れる布引滝。こちらも落差は20m弱ほど。
コースは布引滝横の岩盤を、鎖を掴みながら登るが、帰路は滑り易い。もし足を滑らせ、自重に耐え切れず、鎖を放した場合は落命する可能性がある。
滝の天辺(上の写真)横辺りだったと思うが、山側の岩が苔に覆われ、無数の雫が落ちている。これを「玉簾」(下の写真)と言う。
布引滝上流左岸の岩盤は不動大岳という。その上流辺りの稲妻滝には気づかなかったが、恐らく落差が10m未満のため、滝と認識しなかったのだろう。
地形図の破線が渓谷を離れる地点は道標の建つ三差路となっている。渓谷沿いの道は踏み跡程度になる。ここから次の千丈滝までは距離がある。眠剤の副作用で足に力が入り辛い当方にとっては辛い上りである。
標高900mほどの地点に案内板が建つ最後の滝・千丈滝が懸かっている。落差は渓谷中、最もあり、20数m位だろうか。そのやや上流と最上流の標高970m地点にも小ぶりの滝(下の写真)が懸かっているが、大雨時はこの三つの滝が一つになる。
当方は薬の副作用もあり、ここから引き返したが、帰路は苔等で滑り易い箇所が多いため、一旦更に登って赤星山登山道に合流後、その道を下りた方が良い。
尚、この皇子渓谷はこの夏(8月)の探訪地の中ではベスト1。
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